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引き返す勇気~体験者は語る~

初日にしてバテバテ

2ndimage Kさんが南アルプス・鳳凰三山を単独で縦走しようと試みたのは、 まだ残雪深い3月半ばのことでした。積雪量は尾根でもヒザから胸辺りまで、沢筋の深いところでは3メートル以上残っていました。彼がわざわざこの時期に単独で無謀な登山を試みたのは、 前年にバイク事故で急逝した友人を弔うためでした。「次は雪のある時期に北岳に登ろう」と話していた矢先のことだったので、追悼登山のつもりで北岳を真正面に望む鳳凰三山に登ったのです。

ところが登山道の積雪量は想像以上に深く、雪山では通常数人のパーティでラッセルという雪かき作業を交代しながら行って進むのですが、 彼は全部一人でやるハメになって体力は初日から限界に達していたそうです。

過去の記憶が判断ミスを招く

翌日、夜半に雪が降ったようで新たに30センチの降雪がありました。その日はテントを張った場所から一つ目の山頂までは、雪がなければ1時間ちょっと。 さらに残り2つの山頂を縦走して下山するのはその日の夕方4時の予定でした。大学山岳部出身のKさんは過去に2回、 同じコースを登っていたので早く降りて温泉でゆっくりビールを飲むのを楽しみにしていました。

ところが2日目は歩き出して30分もしないうちに胸辺りまでの積雪に前をふさがれ、ラッセルしようにも身動きが取れない状態だったそうです。そのまま進むか、諦めて引き返すか、 その時の決断が彼の運命を変えたのでした。もし同行者がいれば前進も有りでしたが、単独の場合やはり引き返すべきだったと彼は振り返っています。 ベテラン登山者だったKさんが間違った決断をしたのは、雪に悪戦苦闘して進んだ道を戻る気がしなかったからだそうです。結局そのまま前進を続けた彼は、 突風とさらなる雪に苦しめられることになりました。

流れるニュース速報

結局Kさんは下山予定時刻を30時間過ぎてようやく自力で下山しました。NHKでは彼の遭難が速報で流れ、 翌朝からの捜索のために地元の山岳会や彼の大学山岳部OB会も準備に取りかかっていたそうです。また捜索ヘリも一機出動していました。

ヘリは県警の初動捜索だったため無料(実際には税金で賄われている)で済みましたが、捜索隊が編成され会合を行った際の飲食費10名分が請求されたそうです。

登山において人や自然に迷惑を掛けずに無事に戻ることがスマートだとすると、遭難は対極に位置づけられます。山に限らず、 海でも川でも無謀なことをして遭難事故を起こすようなことは避けたいものです。
参考サイト⇒登る勇気より引き返す勇気